Выбрать главу

 「そりゃあんたにゃわかるめぇよ!」と帽子屋さんは、バカにしたようにみえをきりました。「どうせ、時間と口きぃたこともねぇんだろ!」

 「ないかも」とアリスはしんちょうに答えます。「でも、音楽を教わるときには、こうやって時間をきざむわよ」

 「おぅ、それだそれ、そのせいだよ」と帽子屋さん。「やつだってきざまれたかねぇやな。いいか、やつとうまいことやりさえすりゃあ、やつは時計がらみのことなら、ほとんどなんでも塩梅(あんばい)してくれらぁね。たとえば、朝の9時で、ちょうど授業の始まる時間だ。でもそこで時間にちょいと耳うちすれば、いっしゅんで時間がグルグルと! さあ午後一時半、ばんごはんの時間だよ!」

 (「いまがそうならねえ」と三月うさぎは小声でつぶやいた。)

 「そうなったら、なかなかすごいでしょうねえ、たしかに」とアリスは、考えぶかげにいいました。「でもそしたら― ―あたしはまだおなかがすいてないわけよねえ」

  「最初のうちは、そうかもしんねぇけど」と帽子屋さんが言いました。「でも、いつまでも好きなだけ一時半にしとけるんだぜ」

 「あなた、そんなことしてくらしてるんだ」とアリス。

 帽子屋さんは、かなしそうに頭をふります。「おれはちがうよ。おれと時間は、こないだの三月に口論してさぁ― ―ちょうどあいつがキチガイになるちょっと前だったけどね― ―」(と三月うさぎを茶さじで指さします)「― ―ハートの女王さまがやった大コンサートがあって、おれもうたうことになったんよ」

*     *     *     *     *

「きらきらコウモリよ

おそらで謀(はか)る!」

*     *     *     *     *

知ってるだろ、この歌?」

「なんかそんなようなのは、きいたことある」とアリス。

帽子屋さんはつづけます。「それでさ、こんなふうにつづくじゃないか:

*     *     *     *     *

「世界のうえを

お盆(ぼん)の飛翔(ひしょう)

きらきら― ―」

*     *     *     *     *

 ここでヤマネがみぶるいして、ねむりながらうたいはじめました。「きらきら、きらきら、きらきら― ―」そしてこれをいつまでもつづけたので、みんなでつねってなんとかやめさせました。

  「うん、それでおれが歌の一番もうたいおわらないうちに、女王さんがとびあがって、ぎゃあすか言いやがってさ、『こやつ、ひょうしの時間をバラバラにしておるではないか! 首をちょん切れ!』

 「まあなんてひどいざんこくな!」とアリスはさけびます。

 「で、それからずっと、時間のやつったら、バラバラにされたのを根にもって、おれのたのみをいっこうにきいてくれやしねぇんだ。だからいまじゃずっと6時のまんまよ」

 急にアリスはひらめきました。「じゃあそれで、お茶のお道具がこんなに出てるのね?」

  「そ、そゆこと」と帽子屋さんはためいきをつきました。「いつでもお茶の時間で、あいまに洗ってるひまがないのよ」

 「じゃあ、どんどんずれてくわけ」とアリス。

 「ごめいとう。使いおわるとだんだんずれる」

 「でも最初のところにもどってきたらどうなるの?」アリスはあえてきいてみました。

 三月うさぎがわりこみました。「そろそろ話題を変えようぜ。もうあきてきたよ。このおじょうちゃんがお話をしてくれるのに一票」

 「悪いんですけど、なにも知らないの」とアリスは、この提案にかなりびっくりして言いました。

 「じゃあヤマネにやらせろ!」と二人はさけびました。「おいヤマネ、起きろってば!」そして両側から同時につねりました。

 ヤマネはゆっくり目をあけました。「ねてないよぉ」と、しゃがれたよわよわしい声で言います。「おまえたちのせりふ、ぜーんぶきいてたよぉ」

 「お話してくれよぅ!」と三月うさぎ。

 「ええ、おねがい!」とアリスもたのみます。

 帽子屋さんが言います。「それと、さっさとやれよ。さもねぇと、おわんないうちにねちまうだろ、おめぇ」

 ヤマネはあわててはじめました。「むかしむかし、三人姉妹がいなかに住んでおりました。なまえは、エルシー、レイシー、ティリー。そしてこのいなか姉妹は、井戸のそこに住んでいまして― ―」

 「なにを食べてたの?」アリスは、食べたりのんだりする質問に、いつもすごく興味(きょうみ)があったのです。

 「とうみつを」とヤマネは、一分かそこら考えこんでからいいました。

 「そんなこと、できるはずないわ」アリスはしずかにもうしました。「だって病気になっちゃうもの」

 「まさにそのとおり」とヤマネ。「とっても病気でした」

 アリスは、そんなとんでもない生き方ってどんなものか、想像してみようとしました。でもなぞが多すぎたので、つづけました。「でも、なんだって井戸のそこになんかに住んでたの?」

 「茶ぁもっとのみなよ」と三月うさぎが、とってもねっしんにアリスにすすめました。

 「まだなにものんでないのよ。だからもっとなんてのめないわ」アリスはむっと返事をします。

 「ちょっとはのめない、だろ。なにものんでないなら、ゼロよりもっとのむなんてかんたんだぁ」と帽子屋さん。

 「だれもあんたになんかきいてないわ」とアリス。

 「ひとのこととやかく言うなってったの、だれだっけねぇ」と帽子屋さんは勝ちほこってききました。

 アリスはなんとこたえていいかわかりませんでした。だからお茶とバターパンをちょっと口にして、それからヤマネにむかって質問をくりかえしました。「その子たち、なんで井戸のそこに住んでたの?」

 ヤマネはまた一分かそこら、それについて考えてから言いました。「とうみつ井戸だったのです」