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なのにウミウシ横目でにらみ、『遠すぎ、遠すぎ!』と申します― ―

スケソウダラさんありがとさん、だけどおどりにゃ入りません

入らん、入れん、入らん、入れん、入らん、入れん、おどりには

入らん、入れん、入らん、入れん、入らん、入れん、おどりには

『遠くたっていいじゃない!』と、うろこの友だちこたえます。

『世界は浜辺に満ちている。こちらじゃなければあちらにも

イギリス浜からはなれるごとに、フランス浜辺に近くなる― ―

だからいとしいウミウシさん、青ざめないでおどろうよ。

入ろう、おどろう、入ろう、おどろう、入ろう、おどろう、ぼくらのおどり

入ろう、おどろう、入ろう、おどろう、入ろう、おどろう、ぼくらのおどり』」

*     *     *     *     *

 「どうもありがとう、見ててとってもおもしろいおどりでした」アリスはそれがやっと終わってくれて、じつにホッとしました。「それにあの、スケソウダラのふうがわりな歌も、すごく気に入りました!」

  「ああ、スケソウダラといえば、もちろん見たことあるのよねぇ」とにせウミガメ。

 「ええ、しょっちゅう出てくるもの、ばんご― ―」アリスはあわてて口を閉じました。

 「バンゴってどこだか知らないけど、そんなによく見かけてるなら、どんなかっこうかも知ってるわよねぇ」とにせウミガメ。

 「ええたぶん。しっぽを口にくわえてて― ―それでパン粉まみれ」アリスは考えこんでいいました。

  「パン粉はちがうわぁ。パン粉は海で洗い流されちゃうでしょ。でもたしかに、しっぽは口にくわえてるよね。なぜかというと― ―」ここでにせウミガメはあくびをして目をとじた。― ―「この子に理由とか、説明してやんなさいよぅ」とグリフォンをせっつきます。

  「理由はだねえ、やつら、ロブスターとホントにおどりにいくんよ。それで海にほうりなげられるだろ。だからずいぶん落っこちるわけね。それでもうしっぽをまいちゃうわけ。するとそれが口に入る。するともう、それが出てこなくなる。おしまい」

 「ありがと。それはおもしろいわね。スケソウダラのこと、こんなにはじめて知ったわ」

 グリフォンが言いました。「じゃあもっと話してやろうか。なんでスケソウダラっていうか知ってる?」

  「考えたことない。どうしてなの?」とアリス。

 「せんたくするんだよぉ」とグリフォンは、とってもおもおもしい返事をします。

  アリスはまるっきりわけがわかりません。「おせんたく、をする!」と不思議そうにくりかえすばかり。

  「しょうがねえなあ、じゃああんたの服はどうあらうの? どうやってそんな、まっ白きれいになるの?」

 アリスは自分の服を見おろして、ちょっと考えてから口をひらきました。「洗剤、だと思うけど。『透明感あふれる白さです』って」

 「海のそこのせんたくは、スケソウダラがやんの。『きれいすぎて、すけそうダラ(だわ)!』ってね。これで一つ、かしこくなったろう」

  「でもどこでかわかすの?」アリスはすごく不思議におもってききました。

 「たたみいわしの上だよう、きまってるじゃん。そこらのエビでもそんくらいは知ってるぜ」グリフォンはいささかあきれたようです。

  アリスはまださっきの歌のことを考えてました。「あたしがスケソウダラなら、ヤリイカにこう言ったと思うな。『下がってくれませんか? あなたにはついてきてほしくありませんの!』」

 「うんたしかにヤリイカなんかぜったいにつれてかないわよねぇ」とにせウミガメ。「まともなさかななら、ヤリイカとつきあったりはしないもの」

  「あら、そういうものなの?」アリスはとってもおどろいていいました。

  「あたりまえだよ。もしぼくがおでかけするときに、どっかのさかながきて『おでかけですか』なんてきいたら、ぼく言っちゃうよ。『うるせーな、ヤリィカ!』って!(訳注:うるさいうるさい、苦しいのはわかってるんでぃ!)」

 「… …それって『わりぃか』ってこと?」とアリス。

  「ぼくがそうだと言ったらそうなのよ」とにせウミガメは、ちょっとむっとした口ぶりで言いました。そしてグリフォンがつづけます。「さあ、あんたの冒険をちょっときかせてもらおうじゃないの」

  「あたしの冒険っていうと― ―けさからのなら話してあげられるけど」アリスはちょっとおずおずと言いました。「でもきのうまでもどってもしかたないわ、だってそのころはあたし、別の人だったから」

  「いまの、なんのこったか説明しなさい」とにせウミガメ。 グリフォンがうずうずして言います。「だめだめ、冒険が先。説明ってのは、ありゃえらく時間がかかるんだ」

 そこでアリスは、白うさぎを見たところから自分の冒険の話をはじめました。最初はちょっと不安でした。だって二匹の生き物がすっごく近くによってきて、アリスの左右について、お目目とお口をすんごくひらいていたからです。でも、先にすすむうちに、ゆうきが出てきました。きき手はずっとなにも言いませんでしたが、いもむしに『ウィリアム父さんお歳をめして』を暗唱して、ことばがぜんぶちがって出てきたところにくると、にせウミガメが思いっきり息をすいこんで言いました。「それはじつにおもしろいわぁ」

 「うん、なにもかもすっごくおもしろい」とグリフォン。

 「ぜんぶちがって出てきたのねぇ」とにせウミガメは考えこんでくりかえします。「ぼく、この子がここでなにか暗唱するのをきいてみたいわ。やれって言ってやってよ」とにせウミガメはグリフォンのほうを見ました。まるでグリフォンがアリスに命令する力があるとでも思ってるみたいです。

 「立って『不精者(ぶしょうもの)の宣言』を復唱するんだ」とグリフォン。

 「まったくここの生き物って、人に命令してばかりで、お勉強の復習ばかりさせるんだから。いますぐ学校にもどったほうがましかも」でもアリスは立ちあがって復唱をはじめました。でも頭がロブスターのカドリーユおどりでいっぱいだったので、自分がなにを言ってるのかまるでわからず、おかげでことばもずいぶんへんてこになっちゃったのです。