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 「読むがよい」と王さま。

 白うさぎはめがねをかけます。「どこからはじめましょうか、陛下?」

 王さまはおもおもしくもうします。「はじめからはじめるがよい。そして最後にくるまでつづけるのじゃ。そうしたらとまれ」

 白うさぎが読みあげた詩は、こんなものでした:

*     *     *     *     *

「きみが彼女のところへいって、

ぼくのことを彼に話したときいた:

彼女はぼくをほめてはくれたが、

ぼくが泳げないといった。

彼はみんなにぼくが去っていないと報せた

(これが事実なのはわかっている):

彼女がこの件を追求したら、

きみはいったいどうなる?

ぼくは彼女に一つやり、みんなはかれに二つやり、

きみはぼくらに三つ以上くれた:

みんな彼からきみへもどった、

かつてはみんなぼくのだったのに。

もしぼくか彼女がたまさか

この事件に巻き込まれたら

彼はきみにかれらを解放してくれという、

ちょうどむかしのぼくらのように。

ぼくの考えではきみこそが

(彼女がこのかんしゃくを起こす前は)

彼とわれわれとそれとの間に

割って入った障害だったのだ。

彼女がかれらを一番気に入っていたと彼に悟られるな

というのもこれは永遠の秘密、

ほかのだれも知らない、

きみとぼくだけの秘密だから」

*     *     *     *     *

 「これまできいたなかで、もっとも重要なしょうこぶっけんじゃ」と王さまは、手もみしながらもうします。「では陪審は判決を― ―」

  「あのなかのだれでも、いまの詩を説明できるもんなら、六ペンスあげるわよ」(アリスはこの数分ですごく大きくなったので、王さまの話をさえぎっても、ちっともこわくなかったんだ)「あたしはあんな詩、これっぽっちも意味はないと思うわ」

  陪審(ばいしん)はみんな、石板に書きつけました。「この女性はあんな詩、これっぽっちも意味はないと思う」でもだれもそれを説明しようとはしません。

 「これっぽっちも意味がないなら、いろいろてまがはぶけてこうつごうじゃ、意味をさがすまでもないんじゃからの。しかしどうかな」と王さまは、詩をひざのうえにひろげ、かた目でながめてつづけます。「どうもなにかしら意味はよみとれるように思うんじゃがの。『― ―泳げないといった― ―』おまえ、泳げないじゃろ?」と王さまはジャックのほうをむきます。

  ジャックはかなしそうに首をふりました。「泳げそうに見えます?」(たしかに見えなかったね、ぜんしんがボールがみでできていたもの)。

  「いまのところはよいようじゃな」と王さまは、詩をぶつぶつつぶやきながら、先をつづけます。

「『これが事実なのはわかってる』― ―これはもちろん陪審じゃな― ―『ぼくは彼女に一つやり、みんなはかれに二つやり』― ―なんと、これはこやつがタルトでしでかしたことではないか― ―」

 「でも、『みんな彼からきみへもどった』ってつづいてるじゃないの」とアリス。

  「ほうれ、そこにもどっておるではないか!」と王さまは勝ちほこって、テーブルのタルトを指さしました。「明々白々ではないか。しかし― ―『彼女がこのかんしゃくを起こす前』とは― ―つまよ、おまえはかんしゃくなど起こしたことはないと思うが?」と王さまは女王さまにもうしました。

 「一度もないわ!」と女王は怒り狂って、あわせてインクスタンドをトカゲに投げつけました。(かわいそうなビルは、あれから一本指で石板に書くのをあきらめていました。なんのあともつかなかったからです。でもいまや急いでまた書きはじめました。自分の頭をつたいおちてくるインキを、なくなるまで使ったのです)

 「ではこの詩があてはまらなくてかんしゃ(く)しよう」といって王さまは、にっこりと法廷を見まわしました。あたりはしーんとしています。

 「しゃれじゃ!」と王さまが、むっとしたようにつけたしますと、みんなわらいました。「では陪審は判決を考えるように」と王さまが言います。もうこれで二十回目くらいです。

  「ちがうちがう! まずは処刑― ―判決はあとじゃ!」と女王さま。

 「ばかげてるにもほどがある!」とアリスが大声でいいました。「処刑を先にするなんて!」

 「口をつつしみおろう!」女王さまは、むらさき色になっちゃってます。

 「いやよ!」とアリス。

 「あやつの首をちょん切れ!」女王さまは、声をからしてさけびます。だれも身動きしません。

  「だれがあんたたちなんか気にするもんですか!」とアリス(このときには、もう完全にもとの大きさにもどってたんだ)「ただのトランプの束のくせに!」

  これと同時に、トランプすべてが宙にまいあがって、アリスのうえにとびかかってきました。アリスはちょっとひめいをあげて、半分こわくて半分怒って、それをはらいのけようとして、気がつくと川辺によこになって、おねえさんのひざに頭をのせているのでした。そしておねえさんは、木からアリスの顔にひらひら落ちてきた枯れ葉を、やさしくはらいのけているところでした。

 「おきなさい、アリスちゃん! まったく、ずいぶんよくねてたのね!」

 「ね、すっごくへんな夢を見たの!」とアリスはおねえさんに言って、あなたがこれまで読んできた、この不思議な冒険を、おもいだせるかぎり話してあげたのでした。そしてアリスの話がおわると、おねえさんはアリスにキスして言いました。「それはとってもふうがわりな夢だったわねえ、ええ。でもそろそろ走ってお茶にいってらっしゃい。もう時間もおそいし」そこでアリスは立ちあがってかけだし、走りながらも、なんてすてきな夢だったんだろう、と心から思うのでした。

 でもおねえさんは、アリスがいってしまってからも、じっとすわってほおづえをつきながら、夕日をながめつつアリスとそのすばらしい冒険のことを考えておりました。するとやがておねえさんも、なんとなく夢を見たのです。そしておねえさんの夢は、こんなぐあいでした。